6日の日曜日の夕方、たまたまテレビをつけたら、NHKで「総合診療医ドクターG」という番組がやっていました。
研修医たちが、実際の症例に基づいた再現ドラマを見ながら、主人公が抱えた病名を
当てるという内容。昨年の再放送のようです。
総合診療医という言葉は番組独自の言葉のようで、番組HPによると、
「病気を臓器や部分別にみるのではなく人間をまるごと総合的にみる医者のこと」。
専門分化されすぎた縦割りの医療現場にあって、医療面接(問診)や手による触診に時間をかけ、
各科を横に繋いで診察する総合診療の分野が少しずつですが広がってきているようです。
しかし、鍼灸の世界ではむしろこのような考え方が本来的で、鍼灸による治療というのは
まさに総合診療そのものです。
なにせ「頭が痛い、目がしょぼしょぼする、耳鳴りがする、口が苦い、頚が痛い、動悸がする、
吐き気がする、腰が痛い、足が重い、眠れない」
といった症状を一度に抱えてやって来る方もいらっしゃいますし、面接を進めていくうちに
主訴とは違う症状が次々見つかるというケースもあります。
来院される多くの方が医療機関での受診をすでに済ませていますが、
一つの体の中で起こっていることをそれぞれ別個に診ようとすると、逆に見えなくなってしまうものが
あるようような気がします。患者さん自身もそういった見方に慣れてしまっているので、
それぞれの症状を繋げて患者さんに示し、「一つの体」という全体像を取り戻してあげるのも
鍼灸師の役割だと思います。
今回のドクターG、鈴木富雄先生が勤務されている名古屋大学医学部附属病院総合診療科のHPに、
「私たちの目指す医療は、疾患だけをみるのではなく、各々の人生をかかえた人の
健康問題に関心を注ぎ、目の前の患者のみではなく、まわりを取り巻く家族、地域にも
目を向けることを忘れません。」
と書いてありました。これはまさに私が目指しているところでもあります。
人間というのは、さまざまなシステムの中で存在しています。
細胞、組織、器官といった体内のシステムもありますし、
家族、近所、学校、職場といった社会のシステムもあります。
これらのシステムの不均衡が大きかったり長期間だったりすると、人間の心身に症状が現れます。
言い方を変えると、症状の背景に、体内のシステムだけでなく、社会のシステムまでもが
影響しているのです。ただ痛い部分をエイエイとやっていても、痛みを抱えた人を
何も理解することにはなりません。
言うは易く行うは難しですが、一つの症状から患者さんを取り巻く環境に目を向ける、
また患者さんを取り巻く環境から一つの症状に目を向ける、といった視点を持って治療に
望みたいと日々思っています。