Category: 心療鍼灸 (page 2 of 2)

脳疲労と鍼灸

(前回からの続き)

 

では、どうしたら脳の疲労を回復させることができるでしょうか。

方法はいろいろあるかと思いますが、今回は鍼灸師として、鍼やお灸の刺激が脳疲労の回復にどのように貢献できるか、少しお話ししたいと思います。

 

身体に鍼やお灸をすると、その刺激が感覚神経を伝わって脳に届きます。すると、脳はその刺激に対して、脳内で様々な反応を起こします。

 

その一つは自律神経です。鍼灸によるある種の刺激は、視床下部を中枢とする自律神経のうち副交感神経の活動を高め、心身をリラックスモードに導きます。

その他には、神経伝達物質の生成です。鍼によるある種の刺激によって作られる神経伝達物質はいくつかありますが、例えばβエンドルフィンという物質は、鎮痛作用のほか、脳内の緊張を和らげ、「気持ち良い」感覚を与える作用があります。

 

またセロトニンという物質には、脳の働きを調整する役割があり、精神的な落ち着きや安心感が得られると言われています。

 

さらに、鍼刺激によって視床下部でオキシトシン細胞が増えるという研究報告もあります。オキシトシンは近年注目されている物質で「幸せホルモン」とも呼ばれ、ストレスを和らげ、安心感、幸福感、信頼感を高めるはたらきがあると言われています。

 

このように、施術によって脳内にポジティブな物質を増やすことで、反芻思考のようなネガティブな思考のループをリセットさせることができます。施術後によく患者さんが「頭の中がスッキリした!」とおっしゃることがありますが、これは施術によって脳内に上記のような物質が増えたことで、脳の疲労感が取れたのです。

 

考えごとが止まらない時、頭の中が過去や未来を行ったり来たりの時、それをまた頭の中で、意識レベルでどうにか現在に戻そうとしても、なかなか上手くいかないでしょう。

そんな時は、身体にアプローチする。意識下ではなく無意識下のレベルで、身体の反応にお任せしたほうが上手くいくこともあるのです。

鍼灸はまさに、

身体(刺激)→脳(疲労の回復)→身体(症状の改善)

というアプローチを可能にする施術であると言えるでしょう。

(まだつづく?)

 

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「脳」が疲れていませんか?

休んでいるつもりなのに疲れが取れない、なんだかだるくてしょうがない、こんなことはありませんか?
心当たりのある方、もしかしたらそれは「脳の疲れ」から来ているかもしれません。
脳はあらゆる感覚の終着駅。厄介なのは単純な肉体の疲労よりもむしろ、「疲労感」なのかもしれません。

脳を疲れさせる要因の一つに「考えごとの堂々巡り」があります。
何かをしている時、気づくと全然違うことを考えていること、つまり「心ここにあらず」の状態になっていることはありませんか?
心配、不安、後悔、怒りなど、未来や過去のことについてのネガティブな考えが堂々巡りすることを「反すう思考」と言い、脳をどんどん疲弊させていきます。

脳の疲弊は心だけでなく、身体にもダメージを与えます。
例えば、頭痛、耳鳴り、めまい、首肩こり、腰痛、身体全体の痛みやだるさ、喉のつかえ、呼吸のしづらさ、動悸、胃もたれ、下痢、便秘、冷え、のぼせなどの症状も、医療機関の検査で特に原因が見当たらなければ、脳疲労が関与しているかもしれません。

その場合、これらの身体症状を改善させるには、「脳の疲れを取ること」、つまり「脳へのアプローチ」が必要になってきます。

(つづく)

 

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喪の作業②

喪の作業は必ずしも「大切な人の死」という体験の時だけに行われるものではありません。

 

例えば、

・災害等による住居や財産の喪失

・病気や加齢による、健康で若々しい理想の自分像の喪失

・引っ越しや転勤など、それまで住み慣れた環境の喪失

・進学や就職、結婚など、それまで帰属していた集団や家族の喪失

 

これらも一種の対象喪失であり、もちろんその喪失感に強弱はありますが、喪の作業が行われることになります。

 

こうしてみると、人は幼少期から老年期まで、そのライフサイクルにおいて、心や身体、取り巻く環境に変化が起きるたびに喪の作業を繰り返しているといえます。

別の見方をするなら、人は喪の作業を繰り返すたびに自分自身や周囲との関係を再構築し、新たな目標を見つけて成長していくものといえるかもしれません。

 

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喪の作業 〜ある男性のケース〜

愛する人や、とても大事にしていたものを失ったとき、人は悲しみなど様々な感情を経験しながら、徐々にそのショックから立ち直っていきます。

 

その過程を「喪の作業」といいますが、その過程において身体症状を呈することは、決して珍しいことではありません。

それは、めまいやふらつき、耳鳴りのようなものかもしれませんし、身体の痛みかもしれません。もちろん、身体症状が現れない場合もあります。

 

ずいぶん前になりますが、ある男性が長年連れ添った奥様を亡くされた後、3ヶ月ほどして全身に痛みが現れ始め、それから半年近くもの間、夜も眠れぬほどの痛みで耐えがたいので何とかして欲しいとの依頼がありました。

当然のことながらすでに医療機関を受診し、精密検査等は行っているとのことでお引き受けし、問診の際の訴えの内容や訴えるときの様子から、これは喪の作業による種々の感情が身体化したものだという見立てをしました。

 

喪の作業による身体(化)症状の場合、大事なことは、症状を取ることにとらわれないことです。それよりももっと大事なことがあるからです。

 

さっそく「症状を取ることにとらわれない鍼灸治療」を週1回のペースで始めたところ、ほどなくして「眠れないほどの痛み」が軽減していきました。

さらに続けていくと、痛みの部分が全身から部分に限局されていき、

「まだ痛むには痛むが、動かさないでいると筋肉が弱ってしまう」という言葉が出始め、

治療を始めて3ヶ月がたった頃、施術中に男性が、

「妻と生前、一緒に利用しようと話していたデイサービスに見学に行ってみようかな」と話し始めました。

 

私はこの発言を聞いて、男性の喪の作業がひと山越えたと判断し、治療を終了することに決めました。

男性は、奥様と良い意味での分離が進み、たとえ一緒でなくても、デイサービスに行ってみようという気持ちが芽生えるようになったのです。

 

喪の作業において現れた身体症状の場合、大事なことは、その症状を受容することです。

患者さんはもちろん受容する余裕などありませんから、施術者側にまずその姿勢が求められます。

この男性にとって、眠れないほどの全身の痛みは、喪の作業を進めるうえで出るべくして出たものです。もっと穏やかに進められればよかったのでしょうが、それだけ大きな出来事だったともいえるでしょう。

 

それを理解しようとすることなしに、とにかく取ってしまおうというのは、悲嘆にくれて泣いている人に向かって、他人事として「泣くな」と言っているようなもので、喪の作業をよけいにこじらせ、長引かせることになります。

喪の作業が進めば自ずと症状は治まっていくわけですから(そう簡単に進まないことも多々ありますが!)、そのためにあえて受容するのです。

 

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