自律神経は、意思の力では直接的にコントロールできない神経です。そのため、自律神経の働きを整えるためには、理性でなく本能的な視点生物学的な視点が必要になります。

今回は、生体の防衛システムである3つの自律神経がどのように発達していったか、進化の過程からみていきたいと思います。

 

まず一番最初に発達した防衛システムは、背側迷走神経です。

背側迷走神経は、哺乳類が誕生するよりもはるか昔の、太古の脊椎動物において発達しました。

背側迷走神経による防衛反応は、「不動状態」「シャットダウン」です。

危険が迫った時、できるだけじっとして動かず、代謝を落とし、酸素を使わず、時には死んだふりをして、危険が過ぎ去るのを待ちます。

彼らの天敵は、動くものを捕食する習性があるため、「できるだけ動かないこと」、「死んだふりをすること」が、生き延びるための防衛反応だったのです。

 

その後、一部の魚類において交感神経が発達しました。

交感神経による防衛反応は、「可動状態」「闘争/逃走」です。

危険が迫った時、戦うか逃げるか、いずれにせよ、酸素量を増やし代謝を上げてできるだけ素早く動くことで身を守ろうとする反応です。この発達した交感神経は、より古い背側迷走神経と拮抗した働きをするようになりました。

 

そして、一番新しく発達したのが、腹側迷走神経です。

腹側迷走神経は、これまでの2つの自律神経とは異なり、危機に直面したときに身を守る防衛システムではありません。いわば危機にならない状態を維持することによって身を守る、哺乳類に特有のシステムであり、その反応は

「安全」「つながり」「絆」です。ポージェス博士はこのシステムを「社会交流システム」と呼んでいます。

腹側迷走神経は、お互いにコミュニケーションを取り合い、共感し合い、優しさや愛情を伝え合って、お互いが仲間であり安全な存在であることを確認するときに働く神経です。腹側迷走神経が活性化しているとき、他の2つの自律神経は落ち着き、穏やかに働きます。

 

腹側迷走神経によって作られる社会交流システムは、ポリヴェーガル理論の主要な要素の一つであり、自律神経を整える際の大きなヒントになりますので、また次回に詳しく解説していきたいと思います。

(つづく)

 

参考文献

・ポリヴェーガル理論入門(ステファン・W・ポージェス著/春秋社)

・セラピーのためのポリヴェーガル理論(デブ・デイナ著/春秋社)

・その生きづらさ、発達性トラウマ?(花丘ちぐさ著/春秋社)

 

ポリヴェーガル理論~自律神経の新しいミカタ~ その0

ポリヴェーガル理論~自律神経の新しいミカタ~ その1

 

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